住民票閲覧制限(DV等支援措置)の申請手順と有効期間
[掲載日]2026/05/10 6 -
DVやストーカー被害から逃れて別居・離婚する際、加害者に転居先を知られないようにするためには住民票や戸籍の附票の閲覧を制限する「住民基本台帳事務における支援措置」の申請が欠かせません。本記事では支援措置の制度概要、申請書類と相談機関意見書、有効期間1年の更新手続き、マイナンバー情報連携や勤務先情報の取り扱い、転居後の再申請まで実務的に解説します。
住民票閲覧制限(支援措置)の制度概要
住民基本台帳事務における支援措置とは、DV・ストーカー・児童虐待等の被害者が加害者から追跡されないよう、住民票の写しや戸籍の附票の写しの交付、住民基本台帳の閲覧について厳格に制限する市区町村の運用制度です。根拠は総務省通知による全国的な取扱いで、住民基本台帳法に基づく職権不交付措置として位置づけられています。
申請が受理されると、加害者本人はもちろん、加害者からの委任状を受けた第三者、正当な理由のない弁護士会照会や行政書士の職務上請求に対しても原則として交付が拒絶されます。不動産登記の住所情報、運転免許の住所照会、児童手当等の行政手続きで使用される個人情報連携にも一定の配慮がなされ、被害者の所在が秘匿される仕組みです。
ただし「絶対に漏れない」わけではなく、公的機関からの法令に基づく照会や、子の進学・医療等で必要な場合の例外的な開示は残ります。また、加害者が被害者の親族から情報を得る、SNSで行動範囲が推測される等、制度外での情報漏洩リスクは別途自衛が必要です。
申請書と相談機関意見書の準備
支援措置は市区町村役場の住民担当窓口に申請します。必要書類は次の通りです。
- 支援措置申出書(市区町村指定の様式)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)
- 相談機関の意見書または確認書(警察・配偶者暴力相談支援センター・児童相談所等)
- 子も対象に含める場合は続柄がわかる書類
相談機関の意見書は支援措置の中核要件です。警察署(生活安全課)、配偶者暴力相談支援センター、女性相談所、児童相談所などが発行できます。受付窓口ごとに様式や必要な相談回数が異なるため、最寄りの市区町村や配偶者暴力相談支援センターに事前確認することが重要です。
警察への相談は110番通報や警察署窓口への来署で記録が残り、内容に応じて「ストーカー規制法・DV防止法に基づく保護事案として受理した」という意見書を発行してもらえます。DV保護命令を取得している場合や、児童相談所の一時保護実績がある場合は、その裁判書・証明書が意見書に代わる扱いとなることもあります。
有効期間1年と更新手続き
支援措置の有効期間は申出日から1年間です。1年経過前に更新手続きをしなければ自動的に終了するため、継続が必要な場合は期限までに改めて相談機関の意見書を取り直し、更新申出書を提出する必要があります。期限切れの直前に更新を忘れると、数日〜数週間のあいだ閲覧制限が外れる空白期間が生じるため、申出日と更新時期を必ず手帳やスマートフォンのリマインダーに登録しておきましょう。
更新時には、前回の意見書と同じ相談機関に改めて相談を行い、直近1年間の状況(加害者からの接触の有無、脅迫の頻度、保護命令の有無等)を踏まえて新たな意見書が発行されます。状況が改善しており「継続の必要がない」と相談機関が判断した場合、意見書が発行されず更新が認められない可能性もあります。
| 時期 | すべきこと |
|---|---|
| 有効期間満了3か月前 | 更新方針を検討、相談機関にコンタクト |
| 1〜2か月前 | 意見書取得、市区町村で書式確認 |
| 1か月前まで | 更新申出書提出 |
対象となる記録の範囲
支援措置の対象となるのは、住民票の写し・閲覧のほか、戸籍の附票の写し、マイナンバー関連情報、印鑑登録関連情報など多岐にわたります。特に戸籍の附票は本籍地市区町村で管理されているため、住民票のある市区町村と本籍地が異なる場合、双方の市区町村で支援措置を申請する必要があります。見落としやすいポイントのため注意が必要です。
- 住民票の写し・住民票記載事項証明書
- 住民基本台帳の閲覧
- 戸籍の附票の写し(本籍地市区町村で別途申請)
- マイナンバー関連の個人情報
- 印鑑登録証明書の交付制限
マイナンバー制度の情報連携においても、支援措置対象者の住所情報は関係機関間で慎重に取り扱われます。児童手当・保育料算定等で自治体内の部署間連携が必要な場合でも、被害者情報の取扱いについては特別なルールが適用される運用が増えています。
勤務先・学校情報の取り扱い
住民基本台帳の支援措置は、行政機関が保有する住民票関連情報を守る制度です。しかし、現実に加害者が被害者の所在を突き止める経路は住民票だけではありません。勤務先の給与支払報告書、社会保険の手続き、源泉徴収票、学校の名簿、PTA連絡網、年賀状や慶弔の案内など、多様な経路があります。
勤務先が年末調整で作成し市区町村へ提出する給与支払報告書には、従業員の住所が記載されます。市区町村ではこれをもとに住民税を賦課しますが、支援措置対象者については住民税額の通知書送付先を特別な形にするなどの配慮がなされる運用があります。勤務先に対しては、人事担当者と事情を共有し、従業員情報の取扱いを慎重にしてもらうよう依頼することが有効です。
子の転校先の学校には、配偶者暴力相談支援センターや教育委員会を通じて「加害者からの接触があった場合の対応」を事前に共有しておくと安心です。保護者名簿からの住所除外、緊急連絡先の絞り込み、校門での受け渡し対応など、学校ごとに可能な配慮を相談しましょう。
転居後の再申請と注意点
被害者が転居した場合、支援措置は自動的に引き継がれるわけではありません。転入先の市区町村で改めて支援措置の申出を行い、併せて転出元の市区町村にも継続連絡を行う必要があります。新しい本籍地がある場合は本籍地市区町村での手続きも忘れずに行いましょう。
転居の際は、転出届・転入届の一般的な手続きと支援措置の申請をできる限り同時期に行うことが推奨されます。間に空白期間が生じると、その間に加害者が取得した住民票から新住所が知られるリスクが残ります。引っ越し業者・郵便局の転居届出・金融機関の住所変更など、民間サービスの住所情報にも注意が必要で、支援措置対象者として特別な取扱いを依頼できる事業者もあります。
また、役所の窓口で支援措置の申請を行う際には、加害者が役所内に張り込んでいる可能性も想定し、できるだけ自家用車で乗り入れ可能な裏口利用や、事前予約制の窓口対応を活用するなどの工夫をしましょう。配偶者暴力相談支援センターの職員が同行・付き添ってくれる場合もあるため、相談機関に頼る姿勢が大切です。
支援措置は被害者を守る強力な仕組みですが、万能ではありません。制度を使いこなしつつ、SNSでの位置情報公開を避ける、子にも加害者に会った際の対応を教える、近隣住民と信頼関係を築くなど、重層的な自衛策を組み合わせることが、安全な生活を長期的に守る鍵となります。
さらに、保護命令の申立てを同時並行で検討することも重要です。保護命令は裁判所が発令する対人的な接近禁止・退去命令であり、支援措置と組み合わせることで物理的接近と情報的追跡の両面から加害者を遠ざけられます。弁護士や配偶者暴力相談支援センターと連携し、自分と子の状況に最適な保護の組み合わせを設計しましょう。
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