事実婚(内縁関係)の解消方法|財産分与・養育費・慰謝料はどうなる
[更新日]2026/04/18 64 -
法律上の婚姻届を出さない「事実婚(内縁関係)」を解消する場合、通常の離婚とは異なるルールが適用されます。財産分与や養育費は請求できるのか、手続きはどうなるのか——この記事では事実婚解消の法律的な扱いを分かりやすく解説します。
事実婚(内縁)の法的な保護
事実婚は法律婚と同等に多くの権利が認められています:①財産分与の請求権あり②不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)請求権あり③子どもの養育費請求権あり(ただし認知が必要)④相続権はなし(法律婚の配偶者のみ)。
事実婚を証明するもの:同居期間・住民票の世帯主関係・生計の共同・社会的な夫婦としての認識(年賀状・友人の証言など)。
事実婚解消時の財産分与
事実婚期間中に形成した財産は法律婚と同様に財産分与の対象になります。計算方法も同じで、共有財産を原則1/2ずつ分けます。
問題になるのは財産の開示です。法律婚と違い、調停・審判での強制的な財産開示が使いにくいケースもあります。証拠として:共同口座の通帳・共有名義の不動産・生活費の支払い記録などを保全しておきましょう。
子どもの養育費と認知の問題
事実婚で生まれた子は「非嫡出子」として、父親の認知がなければ法律上父子関係が成立しません。認知があれば養育費の請求ができます。相手が認知しない場合は「認知の訴え」を提起できます(DNA鑑定が証拠になります)。
認知されれば、養育費の相場・計算方法・請求方法は法律婚の場合と同じです。相手が支払わない場合の強制執行も同様に利用できます。
慰謝料と解消の進め方
正当な理由なく一方的に事実婚を解消した場合(特に相手に帰責事由がある場合)は慰謝料を請求できます。不倫・暴力・重大な背信行為がある場合は100〜300万円程度が目安です。
事実婚の解消は「別れる」と意思表示するだけですが、財産分与・養育費・慰謝料の精算が残る場合は法律婚の離婚と同様に協議書または調停を活用してください。弁護士のサポートが特に重要です。
事実婚(内縁関係)と法律婚の法的保護の違い
事実婚(内縁関係)とは、婚姻の意思を持ちながらも婚姻届を提出せずに共同生活を営む関係を指します。法律婚と同様の生活実態があるにもかかわらず、法的な保護の範囲には重要な違いがあります。事実婚を解消する前に、どのような権利が認められ、どのような権利が認められないかを正確に把握することが不可欠です。
| 項目 | 法律婚 | 事実婚(内縁関係) |
|---|---|---|
| 財産分与 | 民法768条で明確に規定 | 判例・条理により認められる |
| 慰謝料請求 | 認められる | 不当破棄の場合に認められる |
| 相続権 | 配偶者として法定相続権あり | 原則として相続権なし |
| 子の親権・養育費 | 離婚時に定める | 認知の有無により異なる |
| 年金分割 | 離婚時に分割可能 | 原則として不可 |
| 氏(名字)の変更 | 婚姻により変更可 | 各自がそれぞれの氏を維持 |
| 配偶者控除(税制) | 適用可能 | 適用不可 |
事実婚は法律婚と比べると権利の範囲が限定的ですが、財産分与や慰謝料については判例の積み重ねにより一定の保護が認められています。特に長期間にわたって生活実態が伴っている場合は、内縁関係として認定される可能性が高まります。
事実婚解消の手順
事実婚を解消する場合、法律婚の離婚と異なり離婚届の提出は不要ですが、財産分与・養育費・慰謝料などをめぐって争いが生じることがあります。一般的には以下の3段階で解決を図ります。
第1段階:当事者間の協議
まずは当事者同士で話し合いを行います。財産分与の方法、子どもがいる場合の親権・養育費、住居の明け渡しなど、取り決めるべき事項を整理し、合意できた内容は必ず書面に残しましょう。口頭での合意は後日「言った・言わない」のトラブルになりやすいため、公正証書を作成することが強く推奨されます。
第2段階:家庭裁判所の調停
当事者間の話し合いで合意が得られない場合は、家庭裁判所に「内縁関係調整調停」を申し立てることができます。調停では中立的な調停委員が双方の意見を聞きながら解決策を模索します。調停が成立すれば調停調書が作成され、法律婚の離婚調停と同様の効力を持ちます。
第3段階:裁判(訴訟)
調停が不成立に終わった場合は、地方裁判所または家庭裁判所に訴訟を提起します。財産分与請求は家庭裁判所の審判手続きで、慰謝料請求は地方裁判所の民事訴訟で扱われる場合があります。内縁関係の存在自体が争点になることもあるため、共同生活の実態を証明する証拠(住民票・写真・通帳の共用記録など)を事前に収集しておくことが重要です。
財産分与の考え方
事実婚においても、共同生活中に形成された財産については財産分与が認められています。これは民法上の明文規定ではなく、最高裁判例および不当利得・共有財産の清算という法理論に基づいています。
財産分与が認められる主な条件
- 内縁関係が社会的に認知できる程度の継続期間・実態があること
- 財産の形成に双方が実質的に貢献していること(家事労働も含む)
- 婚姻の意思が双方にあったことが認められること
- 内縁関係の解消が正当な理由によるものであること
財産分与の対象となる財産・ならない財産
| 区分 | 内容の例 |
|---|---|
| 分与対象(共有財産) | 共同生活中に取得した不動産・預貯金・家財道具・自動車など |
| 分与対象外(特有財産) | 内縁関係前から所有していた財産、相続や贈与で取得した財産 |
判例では、長期にわたる内縁関係において一方が専業主婦(夫)として家事に従事していた場合でも、財産形成への貢献として財産分与が認められた事例が多数あります。分与割合は原則2分の1ずつとされることが多いですが、個別事情によって異なります。
子どもの認知と養育費
事実婚の夫婦の間に生まれた子どもは、出生と同時に母親との親子関係は成立しますが、父親との法的な親子関係は「認知」がなければ成立しません。認知の有無によって、養育費請求の手続きや法的根拠が大きく異なります。
認知がない場合
父親が認知していない場合、法律上は母子家庭として扱われます。養育費を請求するためには、まず認知を求める必要があります。父親が任意認知に応じない場合は、家庭裁判所に「認知の訴え」を提起し、DNA鑑定などの証拠をもとに強制認知を求めることができます。認知が成立して初めて、養育費の請求が可能になります。
認知がある場合
父親が認知している場合は、法律婚の離婚後と同様に養育費を請求できます。当事者間の協議で決定するか、協議が整わない場合は家庭裁判所の養育費調停・審判を利用します。養育費の金額は裁判所が公表している「養育費算定表」を参考に、双方の収入・子どもの年齢・人数を考慮して決定されます。取り決めた内容は公正証書または調停調書に残すことで、不払い時に強制執行が可能になります。
親権について
事実婚の場合、子どもは非嫡出子として扱われるため、認知の有無にかかわらず親権は原則として母親のみが持ちます。父親が親権を持つためには、認知を行ったうえで、母親との合意または家庭裁判所の審判により親権者を父親に変更する手続きが必要です。
よくある質問
Q. 住民票の続柄を「妻(未届)」にしていましたが、事実婚解消後の手続きはどうなりますか?
住民票の続柄を「妻(未届)」「夫(未届)」として登録していた場合、事実婚を解消した後は住民票の記載を変更する必要があります。各自が別居した後、住所変更の届出(転出・転入届)を行う際に続柄の記載も更新されます。同一住所に住み続ける場合は、住民票の続柄変更届を市区町村役場に提出することで「同居人」などに変更できます。なお、この手続きは離婚届のような共同手続きではなく、各自が個別に行うものです。
Q. 一方的に内縁関係を解消された場合、慰謝料を請求できますか?
正当な理由のない一方的な内縁破棄は「不当破棄」として、損害賠償(慰謝料)請求の対象となります。最高裁判例においても、内縁関係の不当破棄は不法行為を構成すると認められています。慰謝料の金額は内縁関係の期間・解消の経緯・精神的損害の程度などを総合的に考慮して判断されます。ただし、双方合意による解消や正当な理由がある場合(DV・不貞行為など)は相手方からの請求が認められない、または減額されることがあります。請求するためには内縁関係の実態を示す証拠(共同の住民票・写真・メッセージ記録など)を確保しておくことが重要です。
執筆
離婚ポータル事務局
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