夫婦の財産目録テンプレートと作成手順【記入例付き】
[掲載日]2026/05/27 1 -
夫婦の財産目録は、離婚協議・調停で財産分与を公平に進めるための基礎資料です。目録の作成漏れは不利な条件での合意につながります。本記事では、積極財産・消極財産の整理、別居日を基準日とする運用、評価額の出し方、Excel/PDFで提出する際のコツ、記入例付きの標準フォーマットまで、実務で使える形で解説します。
財産目録とは何か・なぜ必要か
財産目録とは、夫婦が共有する財産(プラスの資産=積極財産)と負債(マイナスの財産=消極財産)を一覧にしたリストです。離婚時の財産分与は、原則として婚姻期間中に形成された共有財産を夫婦で2分の1ずつ分け合う「清算的財産分与」が基本ですが、そのためにはまず「何が、どこに、いくらあるか」を両者で共通認識にする必要があります。
家庭裁判所の調停でも、最初に行うのが財産目録の交換です。裁判所が書式を用意している場合もあり、調停委員はこの目録をもとに分与額を算定していきます。逆に、目録に載っていない財産は事実上「ないもの」として扱われるリスクがあるため、自分側の財産だけでなく、相手方の財産も漏れなくリストアップする姿勢が重要です。
協議離婚の段階でも、公正証書や離婚協議書を作成する際に財産目録を添付しておくと、後日「あの資産の話は聞いていない」といった紛争を防げます。特に不動産や退職金といった高額資産が関わる場合、財産目録の精度が合意の妥当性を左右します。
積極財産のリストアップ(預貯金・不動産・有価証券・保険・退職金)
積極財産は、現金化できる資産の総称です。以下のカテゴリを一つずつ洗い出しましょう。
- 預貯金:銀行・ゆうちょ銀行・ネット銀行の全口座。基準日の残高証明書を取得
- 不動産:自宅・投資用物件・土地。登記事項証明書と固定資産評価証明書を取得
- 有価証券:株式・投資信託・ETF・債券。証券会社の取引残高報告書
- 生命保険:解約返戻金が発生する終身保険・養老保険・学資保険。保険会社に解約返戻金額証明を請求
- 退職金(見込額):勤務先に退職金規程の写しと、現時点で退職した場合の自己都合退職金額を照会
- 自動車・バイク:中古車査定価格を取得
- 貴金属・美術品・骨董品:鑑定書または買取査定
- 暗号資産(仮想通貨):取引所の残高スクリーンショット、取引履歴
相手方の財産を把握する手段が限られている場合、弁護士会照会(23条照会)や調停中の調査嘱託を活用して金融機関に残高照会をかける方法があります。特に預貯金は相手方が自発的に開示しないケースも多いため、婚姻期間中に通帳・給与振込口座・ネット銀行のメール通知等を確認して、金融機関名を特定しておくと後で役立ちます。
消極財産(住宅ローン・カードローン・教育ローン)の取扱い
借金やローンなどの消極財産も、婚姻期間中に夫婦の生活のために生じたものであれば、財産分与の対象に含まれます。単純に名義人が負担するのではなく、積極財産から消極財産を差し引いた純資産を2分の1ずつ分け合うのが基本的な考え方です。
リストアップすべき消極財産の典型例は次のとおりです。
- 住宅ローン:金融機関の残高証明書、オーバーローン/アンダーローンの判定
- 自動車ローン:現在残債と車両時価の比較
- カードローン・キャッシング:契約書、直近の返済予定表
- 教育ローン・奨学金:子の教育費のために借りたもの
- 事業資金(夫婦協力の事業に関する借入):金銭消費貸借契約書
- リース債務・分割払い残債:家電・家具・教育教材等
一方、ギャンブルや浪費、個人的な趣味のための借入れ、不貞相手への支出のための借金など、夫婦生活に関係のない個人的な債務は原則として財産分与の対象外です。ただし、これらの主張には証拠が必要で、相手方が「生活費だった」と反論する余地があるため、立証資料(借入契約書、使途を示す明細等)を整える必要があります。
別居日を基準日とする実務運用
財産分与の対象となる財産の範囲や評価は、「基準日」時点のものが原則とされます。家庭裁判所の一般的な運用では、夫婦が別居した日(別居開始日)を基準日とするのが主流です。別居によって経済的協力関係が事実上終了したとみなすためです。別居していない場合は離婚日(または調停成立日)を基準にします。
基準日を意識する理由は、別居後に得た収入や形成した財産は、原則として分与対象から外れるためです。例えば、別居後に支給された賞与や、別居後に購入した車両は基本的に個別財産として扱われます。逆に、別居後に減少した預貯金残高は、別居前の基準日残高で計上し、別居後の個別の生活費支出は控除対象になりません。
別居日が争いになるケースでは、住民票の異動日、賃貸借契約書の入居日、家計が分離された日(別口座管理開始日)、メール・LINEのやり取りなどで日付を特定します。別居日の認定は調停委員や裁判官の裁量が働く部分なので、できるだけ客観的な証拠を残しておくことが重要です。
評価額の出し方(不動産・株式・退職金)
財産目録の質は、評価額の妥当性で決まります。主要資産の評価方法を整理します。
| 資産種類 | 評価方法 | 根拠資料 |
|---|---|---|
| 不動産 | 複数業者の査定平均/不動産鑑定士の評価 | 査定書、鑑定評価書 |
| 上場株式 | 基準日の終値×保有株数 | 取引残高報告書 |
| 投資信託 | 基準日の基準価額×口数 | 取引残高報告書 |
| 生命保険 | 基準日の解約返戻金相当額 | 保険会社発行の証明書 |
| 退職金 | 基準日時点の自己都合退職金額×婚姻期間/勤続期間 | 退職金規程、人事証明 |
| 自動車 | 中古車査定相場(レッドブック等) | 複数査定サイトのスクショ |
不動産は売却しない前提の場合、固定資産税評価額や路線価ベースの概算では低めに出る傾向があるため、実勢価格に近い不動産業者の査定を複数取得するのが公平です。退職金は、将来支給見込み額のうち婚姻期間に対応する部分が分与対象となります。勤続20年で婚姻期間10年なら、退職金見込額の半分が分与対象、その2分の1が相手方の取り分という計算が基本です。
財産目録テンプレート(記入例付き)
実際に使える財産目録のフォーマット例を示します。ExcelかGoogleスプレッドシートで同じ構造のシートを作成し、後述のPDF出力をすれば調停にそのまま提出できます。
| 区分 | 種類 | 名義 | 詳細 | 評価額(円) |
|---|---|---|---|---|
| 積極 | 預金 | 夫 | A銀行〇〇支店 普通 1234567 | 3,250,000 |
| 積極 | 預金 | 妻 | B銀行〇〇支店 普通 7654321 | 1,480,000 |
| 積極 | 不動産 | 夫 | 〇〇市〇〇町1-2-3 土地建物 | 32,000,000 |
| 積極 | 退職金見込 | 夫 | 〇〇株式会社 基準日時点自己都合 | 8,200,000 |
| 消極 | 住宅ローン | 夫 | C銀行 残債 | -24,500,000 |
| 消極 | カードローン | 妻 | Dカード 残債 | -350,000 |
この例での純資産は、積極(3,250,000+1,480,000+32,000,000+8,200,000=44,930,000)から消極(24,500,000+350,000=24,850,000)を差し引いた20,080,000円となります。原則として夫婦で2分の1ずつなので、一方が受け取る目安は1,004万円となります。ただし、特有財産(婚姻前からの資産、相続財産)が混ざっている場合は、その分を控除する必要があるため、取得時期や原資の記録も欄外に整理しておきましょう。
Excel・PDFで提出する際のコツ
実務上は、Excelで作成した財産目録をPDF化して提出するのが一般的です。提出前にチェックしたいポイントをまとめます。
- 1枚目に「基準日」「作成日」「作成者」を明記する
- 各行に根拠資料の書類名・発行日を記載する欄を設ける
- 合計額と純資産額を自動計算させ、計算式を崩さない
- 金融機関名・口座番号は下4桁のみ記載するなどプライバシー配慮
- PDF化する際はパスワード保護または個別送信で情報漏洩を防ぐ
- 根拠資料(残高証明書等)は別紙として通し番号を付けて添付
調停では、財産目録を相手方にも共有するため、感情的な表現や相手方への非難コメントは書き込まず、あくまで客観的な事実とデータだけに絞ることが重要です。主張すべき内容は別途「主張書面」にまとめます。目録は数字で語る資料と位置づけましょう。
作成した目録は弁護士や行政書士のレビューを受けると抜け漏れを発見しやすくなります。特に退職金・年金・保険の評価額は専門知識を要するため、必要に応じて専門家の関与を検討してください。しっかり作り込んだ目録は、公平な分与合意への最大の近道です。
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離婚ポータル事務局
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