退職金と財産分与|離婚時の計算方法と受け取れる金額の目安
[更新日]2026/04/18 62 -
離婚時の財産分与で見落としがちなのが「退職金」です。まだ受け取っていない将来の退職金も、婚姻期間に対応する部分は財産分与の対象になります。この記事では退職金と財産分与の関係・計算方法・受け取れる金額の目安をわかりやすく解説します。
退職金は財産分与の対象になるか
退職金は「将来受け取る予定の財産」であっても、婚姻期間中に形成された部分は財産分与の対象になります。判例(最高裁)でも認められており、特に退職まで10年以内の場合は算入されやすいです。
対象となる金額の計算式:退職金見込み額 × (婚姻期間 ÷ 勤続年数)× 1/2。例えば退職金2,000万円・勤続30年・婚姻20年の場合:2,000万円 × (20/30) × 1/2 = 約667万円が財産分与の対象額となります。
退職金の財産分与を請求するための証拠
退職金の財産分与を求めるには、相手の退職金見込み額を把握する必要があります。①就業規則・退職金規程(会社の規則)②退職金試算書(会社の人事・総務に問い合わせ)③企業年金の加入証明書。
相手が開示を拒否する場合、調停・裁判で「文書送付嘱託」や「調査嘱託」を利用して会社に直接問い合わせることも可能です。弁護士に依頼することで、より確実に情報を取得できます。
退職金がまだ先の場合の対応方法
退職まで20〜30年ある場合、将来受け取れるかどうかが不確実なため、財産分与に含めない判例もあります。ただし協議離婚では当事者が合意すれば算入できます。
現実的な対応方法:①退職時に支払う旨を公正証書に記載しておく②現時点での財産でできる限り精算する③財産分与の代わりに慰謝料や養育費を増額する、という交渉もあります。
企業年金・確定拠出年金(iDeCo)の扱い
退職金と同様に、企業年金(確定給付型)や確定拠出年金(DC・iDeCo)も婚姻期間に対応する部分は財産分与の対象です。確定拠出年金は「年金情報通知書」で残高を確認できます。
公的年金の年金分割とは別の制度ですので混同しないよう注意が必要です。これらの財産を正確に評価するには専門的な知識が必要なため、財産が複雑な場合は弁護士への相談をおすすめします。
退職金が財産分与の対象になる条件(既受給・将来受給の違い)
退職金は、給与の後払い的性質を持つと解されており、婚姻期間中に形成された部分については財産分与の対象となります。民法768条に基づく財産分与において、退職金の扱いは「既に受給済みのケース」と「将来受給予定のケース」で考え方が異なります。
既に受給済みの退職金
離婚時点で既に退職金を受け取っている場合、その残額が預貯金や不動産として残っていれば、婚姻期間に対応する部分は明確に分与対象となります。既に生活費や住宅ローンの返済に充てて消費されている場合は、原資を追跡して財産分与の基礎に含めるかが争点になります。
将来受給予定の退職金
離婚時点でまだ退職していない場合でも、近い将来(概ね10年以内)に支給される蓋然性が高いケースでは分与対象に含めるのが裁判実務の傾向です。勤務先の経営状態が安定していること、退職金規程が整備されていること、勤続年数が十分にあることなどが判断要素となります。逆に、退職まで20年以上あり支給が不確実な場合は分与対象から除外される傾向があります。
将来の退職金の計算方法(別居時・離婚時自己都合退職額方式など)
将来受給予定の退職金をどのように評価するかは、裁判実務でもいくつかの方式が用いられています。代表的な計算方法は以下の通りです。
| 計算方式 | 計算内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 別居時自己都合退職額方式 | 別居日時点で自己都合退職したと仮定した退職金額を基礎とする | 最も採用例が多く、公平性が高い |
| 離婚時自己都合退職額方式 | 離婚成立日時点で自己都合退職したと仮定した退職金額を基礎とする | 別居期間が短いケースで用いられる |
| 定年退職額按分方式 | 定年時の見込額を勤続年数で按分し、婚姻期間分を算出 | 定年が近い場合に用いられる |
| 中間利息控除方式 | 将来受給額からライプニッツ係数等で現在価値に換算 | 支給時期が先の場合に使用 |
最も一般的なのは別居時自己都合退職額方式で、「別居時の自己都合退職金見込額 × 婚姻期間の勤続年数 ÷ 全勤続年数 × 分与割合(通常2分の1)」という式で算出します。例えば、別居時の自己都合退職金見込額が800万円、全勤続年数20年、うち婚姻期間中の勤続年数が16年であれば、800万円×16÷20÷2=320万円が分与対象となります。
公務員の退職金・企業年金の取り扱い
公務員の退職手当は、国家公務員退職手当法や各自治体の条例に基づき支給の確実性が極めて高いため、民間企業の退職金よりも分与対象として認められやすい特徴があります。勤続年数や退職理由による支給率も法令で明確に定められているため、評価額の算定もしやすい点がメリットです。
企業年金・確定拠出年金の扱い
企業年金(確定給付企業年金)については、退職金の一部として一時金受給可能な部分は分与対象に含めるのが一般的です。確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)は、別居時点の資産評価額を基準に、婚姻期間に対応する部分が分与対象となります。ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、現金での精算ではなく他の財産との調整で清算することが多いです。なお、厚生年金部分については年金分割制度(合意分割・3号分割)で別途処理されるため、財産分与とは区別して扱います。
退職金の分与を受けるタイミングと方法(一括・退職時支払い)
将来の退職金を分与する場合、支払い方法は主に次の2パターンがあります。
- 離婚時一括払い方式:離婚成立時に、算定された分与額を現金または他の財産(不動産、預貯金等)で一括精算する方法。権利関係が明確になり、将来のトラブルを防げるメリットがあります。
- 退職時支払い方式:実際に退職金が支給された時点で、取り決めた割合または金額を支払う方法。支払う側の資金負担が軽減される一方、退職まで長期間にわたる場合は支払い不履行リスクや、相手方の転職・死亡等のリスクが残ります。
実務上は、離婚時の一括払いが最も確実で推奨されます。一括で支払えない場合は分割払いとし、連帯保証人を付けるか、後述する公正証書による強制執行認諾文言を必ず付すべきです。
離婚協議書・公正証書への記載例と注意点
退職金を分与対象とする場合、口約束ではなく離婚協議書または公正証書に明記することが必須です。以下は記載例の一例です。
【記載例】「甲は乙に対し、甲の勤務先○○株式会社からの退職金のうち、婚姻期間に対応する金○○○万円を財産分与として支払うものとし、令和○年○月○日までに乙名義の指定口座に振り込む方法により支払う。」
退職時支払い方式を採用する場合は、「甲が○○株式会社を退職し退職金を受領した日から30日以内に」といった支払時期の特定、「退職金額の○%に相当する金額」という算定基準、そして勤務先変更時の取り扱いも明記します。公正証書化する際は強制執行認諾文言を必ず入れ、不履行時に給与や退職金を直接差し押さえられるようにしておくことが重要です。
よくある質問
Q1. 夫が退職金はないと言っていますが、本当に調査できますか?
勤務先の就業規則や退職金規程は、労働基準法により従業員への周知が義務付けられています。配偶者経由での確認が難しい場合、弁護士会照会制度や訴訟手続における調査嘱託を利用して勤務先に直接照会することが可能です。公務員であれば人事院規則や条例で支給基準が公開されているため、勤続年数と職位から概算額を算定できます。
Q2. 退職金を分与した後、相手が早期退職して減額された場合はどうなりますか?
離婚時一括払いで既に精算済みであれば、後日の減額は影響しないのが原則です。退職時支払い方式を採用していた場合は、協議書に「実際の支給額を基礎とする」旨を記載しているかどうかで結論が変わります。トラブル防止のため、離婚時点で確定額を一括精算する方式を強くおすすめします。
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執筆
離婚ポータル事務局
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